授業「生成AIについて知ろう」

6年生で本日,標記の授業が行われました(1組3校時,2組6校時)。7月には文部科学省から「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が出され,学校教育の中での生成AI活用について考えていくことは重要な課題にもなりました。

例えば今回取り扱ったChatGPTは,13歳以上(ただし18歳未満の場合は保護者同意が必要)が使用できるシステムで,小学生が個人で今すぐに活用できません。しかし,6年生の生まれが早い子供は約7ヶ月後に使用可能年齢を迎えることになります。その前に,生成AIとの適切なつきあい方についての見方・考え方を一人ひとりに持たせることは重要であると考え,この授業は計画しました。

授業のめあては「生成AIについて正しい知識を身につけて,これからの使い方について考えよう。」としました。

1 ルールを知る

上記文部科学省から出されたガイドラインにも載っている「主な対話型⽣成AIの概要」の一部を提示して,使用には年齢制限があり,また保護者の同意が必要であることを確認しました。
「だから今日は,先生が使っているところを見ながら,いっしょに考えていきましょう。」と伝え,まず子供に「何か調べたいことはない?」と問いかけ,拾った言葉をその場で入力して生成AIの使い方や性能について大まかに知らせることから始めました。様々な言葉を先生が生成AIへ入力するたびに,ものすごいスピードで回答が表示される様子に驚きの声も上がっていました。

2 先生が書いたもの?生成AIが書いたもの?

3つの文章「夏休み明けのあいさつ」「熱中症の注意喚起」「夏の俳句」をそれぞれ提示して,「これは先生が書いたものか?生成AIが書いたものか?」を問いました。子供の印象は様々で,どの文章に対しても「先生」「生成AI」に偏った答えにはなりませんでした。ここで気づかせたかったことは次の2点でした。

  • 生成AIは極めて短時間で文章を作っていること,先生が作ったらそれなりに時間がかかったことを,実際の所要時間を表示して知らせた。生成AIは優れた性能であり,便利なものである。
  • 結局,先生が作ったか生成AIが作ったかについて,全員が正解することはなかった。誰が作ったものか,もしかしたらバレないかもしれない。

3 あなたは使いたい?使いたくない?

先生がここで「あなたは使いたい?使いたくない?」と二択の問いをしました。子供達には両方の答えがありました。

  • (使いたい派)便利。すごい。はやい。おもしろい。いいことに使ったら便利そう。すぐにいい答えが出る。等
  • (使いたくない派)誰が書いたかわからないのでこわい。悪用されたらヤバそう。等

4 これはどう思う?

  • 先生が自分の名前を生成AIに入力したことについてどう思うかを問いました。子供達からは,「危ないと思う」「それ個人情報だからヤバいんじゃないか」という発言がありました。それを受けて先生は,個人情報の取り扱いについては厳重に注意を払う必要があることを伝えました。ちなみに先生の個人名を生成AIで聞いても,有名人ではないので有効な回答はなかったことも紹介しました。
  • 生成AIを使って読書感想文を書くことについてどう思うかを問いました。「使いたくなる」という意見は少数派で,多くが「そもそも自分の感想を書くための感想文を生成AIに書いてもらっても意味がない」「何人も同じ読書感想文を出してくるかもしれない」「自分で考えた文章のほうが気持ちが伝わる」「すごい文章を送ってこら
    れても,小学生が書くレベルじゃないものだったらバレてしまう」「将来のために自分の力でやらないと」等の否定派でした。その後先生はガイドラインに示された「読書感想⽂などを⻑期休業中の課題として課す場合には、AIによる⽣成物を⾃⼰の成果物として応募・提出することは不適切⼜は不正な⾏為である」ことを伝え,著作権に係る問題があることにも触れました。

5 こんな使い方どうでしょう?

  • 先生が書いた文章を生成AIで添削してもらう様子を紹介しました。誤字は修正されるし,言い回しがきちんとした文章になることを見た子供達でしたが,必ずしも生成AIの文章が良いと感じる子供だけではなく,「生成AIが作った方は,言葉が難しく感じる」「間違っていてもわかるし,先生が作った方が人間味がある」等の理由で添削前の方が好きだと答える子供もいました。
  • それを受けてさらに生成AIへ「もう少しフランクな感じにしてみて」と依頼して,フランクな書きぶりの文章が表示されたことも示しました。いずれにしても,添削という使い方は,文章を書く上で生成AIの有効な活用法だという確認をしました。
  • さらに,「海の汚れを減らすために私たちができることについて教えて」と生成AIに問うと,たくさんのアイディアを出してくれることを示し,自分でなかなかアイディアが思い浮かばない時,生成AIを使ってヒントをもらい,それを参考にして自分の考えを膨らませていくような使い方もとても有効であることを紹介しました。
  • 一方で,生成AIに対して最新のデータを元にした答えを求めても答えてくれないことも示し,生成AIにも苦手なことがあるということについても伝えました。

6 感想を書く

Googleクラスルームに用意されたフォームへ,今日の感想を各自で書き込みました。最終的にワードクラウドで集約すると,写真の通りになりました。1組と2組では顕著に使われた言葉に違いがありましたが,「しない」と大きく表示されているのは「生成AIを使わない」という意味ではなく「こんな使い方をしない」という言葉がたくさん使われていたためだと思われます。授業のめあては十分に達成された授業となりました。

実際に生成AIを使える年齢になって,子供達がどのようなつきあい方をするのかはわかりません。しかし,今回のような授業を一度でも経験しておくと,正しい知識を元にしたあるべき行動については意識できた状態で,生成AIに出会うはずです。今の子供達は将来,AIを活用するような職業に就かなければならないし,AIにはできない・AIが苦手とするような職業に就かなければならないわけです。AIと上手につきあうことは,将来ある子供達にとって必然です。生きて働く情報活用能力を培っていくために,子供達には様々な経験を通して資質・能力を高めていってほしいと願っています。そのための「導入授業」として,今回は価値ある内容であったと確信しています。

笠岡市立笠岡小学校ホームページはこちら